活発化するアジアREIT市場の今後
アジアREIT市場は、2010年の後半に上場活動が活発化し、TPO(新規株式公開)への関心が高まって、強含みとなっている。アジアにおける2010年のRETTの時価を額は前年比46.8%増の950億米ドルこ上昇し、記録的な成長を見せた。またアジアのREIT価格は7-12月のREIT Indexの29%の上昇を筆頭に目覚ましい上昇を記録した。香港のREIT Indexは25%成長し、シンガポールRETT指標は13%上昇した。
2010年下半期にアジアでは8銘柄の新REITのIPOが相次ぎ、金融危機以前つ勢いに完全復帰した。なかでも東南アジア最大の新規上場REITで70の物流資産からなるシンガポールのMapletree ndustrial Trustはシンガポール証券取引所のIPO規模でも2位となる大型案件である。また、世界最大のイスラムREITであるSabana Shariah CompliantIndustrial REITがシンガポール証券取引所に上場し、中東をはじめとした域内外の多くの投資家の関心を引きつけた。
勢いづくアジアREITでは資産取得も堅調であり、2010年の取得総額は合計でiofi米ドルを超え、2009年の3倍となり、記録史上最大となった。その内訳をみると、シンガポールと日本での取得活動がそれぞれアジアの取得総額の57%と33%を占めている。下期には、アジアを超えたクロスボーダー投資を開始するアジアREITも出現し、注目を集めている。シンガポール上場のAscott REITやマレーシア上場のAL-Aqar KPJ REITなどで、収入源を多角化させるためにオセアニアとヨーロッパにポートフォリオを取得した。
アジア諸国の多くではREIT市場の規制緩和が引き続き実施されている。タイにおけるREITのLTV上限の規制緩和や韓国のREIT資産処分時の制限緩和、マレーシアでの諸税の撤廃などである。こうしたアジアREIT市場の活況を背景に、現在、中国でもREIT市場の創設に向けた議論が進行している。それに先立ち、香港では3月末に北京の複合資産を保有するHui Xian REITが初の人民元建てREITとして香港証券取引所にIPOし、中国系投資家から着目されている。
「国内外の投資家は旺盛な投資意欲を見せており、豊富な資金を背景に、2011年にアジア投資家の存在感はより顕著になると見込まれる。金融危機時に落ち込んだサブプライム投資以降、資産価格は完全に回復しており、今後も高い引き合いで価格は上昇する。RETTの投資活発化にけん引され、2011年にはアジアの年金基金や政府系ファンドも不動産投資によるポートフォリオ拡大を進展させ、アジアの不動産新興市場はさらに成長する」と予測する。